インプラント治療が注目を集めるにつれ、技術や知識、経験が十分でないのにインプラント治療を始める歯科医院が増えてきています。そのため、インプラントトラブルが相次いで起こっているという現実も。当院へは、他院で失敗したインプラントの修復のためにご来院いただく患者様も多くいらっしゃいます。このような経験から、インプラントにまつわるトラブルとその原因について考えられる点をご紹介します。
トラブルが続発している原因としては、他の治療法よりも比較的単価が高いため採り入れたいと考える歯科医師も多くいるという反面、近年のインプラント治療自体が比較的新しく、技術についての情報がドクター自身十分に身につけられていないことが考えられます。
インプラント治療は歯科医師免許を持っていれば、誰でも治療が行えます。なかには、大学で専門的に勉強したわけではないドクターもいるほどです。実際に、インプラントメーカーの開催する研修会や講座へ出席しただけで、治療を始めるドクターが存在することは否定できない事実なのです。
インプラント治療は、手術によって人体に人工物を埋入する治療法です。そのため、あらゆる場面で技術力と慎重さが要求されます。しかし、先にご紹介したような理由から、技術が未熟で、十分な知識や経験がないままに治療を行うドクターが増えてきているため、器具も適切に扱えないといったトラブルが相次いでいます。
ドクターの技術不足によってこんなトラブルが……
- ドリルの扱いが適切でないため、顎の骨に熱や負荷がかかり、損傷が起こる
- インプラント埋入前の切削が正確にできず、インプラントが脱落
- インプラント埋入時に誤って神経や血管を損傷し、後遺症につながるケースも
インプラントの成功のためには、精密な検査、適切な診断、安全安心な処置を行うことが重要です。これらを実現するためには、さまざまな設備や十分に管理された衛生環境が不可欠。トラブルの発生リスクは、設備を整えることでも、ある程度回避できるのです。一般の治療室と区別してオペ室を設けたほうが、より安全性が高まるといえるでしょう。
医院の設備不足によってこんなトラブルが……
- 術中・術後の衛生管理が不十分だったため、感染症を誘発
- 必要な精密検査なしに診断し、誤った治療、あまり効果のない治療が行われた
- 十分な設備がないままに治療を行い、急な異変に対応できず医療ミスが発生
他の治療でもいえることですが、インプラントでは特に精密な検査が必要になります。顎周辺には神経や血管などが複雑に存在しており、傷つけるようなことがあれば後遺症を引き起こすことすらあります。また、歯周病など感染症の有無はしっかり事前に確認しておくことができるはずです。歯周病を放置していると、インプラント周囲炎のリスクを高めてしまうことも。
検査不足によってこんなトラブルが……
- 顎の骨の状態をしっかり把握できていなかったため、埋入時に顎の骨や神経を損傷
- 歯周病の把握や十分な治療を行ってなかったためにインプラント周囲炎を誘発
インプラント治療後はメインテナンスや定期検診が欠かせません。というのも、インプラントは虫歯になることはないものの、歯周病に似た「インプラント周囲炎」になることがあるためです。メインテナンス・定期検診の必要性をきちんと伝えず、患者がしっかりその問題を理解できていないと、インプラント周囲炎になったり、せっかくのインプラントが脱落・欠損してしまったりするのです。
患者への説明不足・メインテナンス不足によってこんなトラブルが……
- インプラントが骨と結合するまで、患部が気になって舌や指で触って脱落
- メインテナンス・定期検診を怠り、インプラント周囲炎が進行し脱落
- 噛む力の加減ができず、インプラントが欠ける・折れる・脱落する
- くいしばりや歯ぎしりのクセへの対策ができず、インプラントが欠ける・折れる・脱落する